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安全衛生活動は、経験が無いと何をするのか全く分からない分野であると思われます。そこで自主的な安全衛生活動の内、基本的なものをご紹介していきたいと思います。今回はヒヤリ・ハット活動をご紹介します。

ヒヤリ・ハット活動の目的

ヒヤリ・ハット活動は、事故には至らなかった事象や行動(=ヒヤリとした経験・ハッとした経験。例えば、床が濡れていたために滑って転びそうになった、階段を降りている時に抱えていた荷物で足元が見えず踏み外しそうになった、急いでいた時にドアを開けた向こう側に人がいてぶつかりそうになった、等々。)について把握することで、職場内に潜む危険に対する気付きを得ることが目的です。起きてもいない事故の可能性に気付くことが、どうして安全衛生活動に繋がるのでしょうか?

ハインリッヒの法則・バードの法則

アメリカのハインリッヒという人物が労働災害の発生する確率を統計的に分析しました。その結果、1件の重大事故に至るまでに29件の小さな事故が発生し、その背後には300件の傷害のない事故(=大惨事になってもおかしくなかった事故)があり、さらにその背後には数千の不安全行動や不安全状態があると結論付けました。これがハインリッヒの法則(1:29:300の法則)と呼ばれているものです。
ハインリッヒの法則

また、バードという人物がアメリカの保険会社の事故報告を分析した結果、1つの重大事故の背後に10件の軽い傷害事故、20件の物損のみの事故、600件の傷害も物損もない事故があるという結果を導いています。(バードの法則)

どちらの調査結果も、大きな事故が起きる背景には数多くの「軽微な事故や事故になりそうな事象(=ヒヤリ・ハット体験)」があることを示唆しています。ヒヤリ・ハット活動は、この「ヒヤリ・ハット体験」の数を減らすことが重大な事故の発生抑止に繋がるという考えに基づいています。

ヒヤリ・ハット活動の効果

  1. ヒヤリ・ハット活動に参加することで、危険を感じ取る感覚を養うことが出来ます。
  2. ヒヤリ・ハット活動をすることで、職場の危険情報を共有することが出来ます。
  3. ヒヤリ・ハット活動をすることで、KY(危険予知)活動やリスクアセスメントに発展させることが出来ます。

ヒヤリ・ハット活動の進め方

ヒヤリ・ハット活動の意義を確認した所で、具体的な方法を確認しましょう

  1. 全員が参加しましょう
  2. ヒヤリ・ハッとする経験をするのは正社員だけではありません。パート・アルバイトの方や新人・ベテランまで全ての人が経験する可能性があります。また、安全への意識は全員で共有しないと効果が出ません。意識向上のためにも全員が参加するようにしましょう。

  3. 報告者の責任を追求しないようにしましょう
  4. ヒヤリ・ハットの目的は、不安全行動や不安全状態に気付くことやその情報を共有すること、そして不安全行動や不安全状態の改善に繋げることが目的です。決して責任を追求することが目的ではありません。報告者の責任が追求されるようだと誰も報告しなくなりますので注意しましょう。

  5. 報告はその日の内にしましょう
  6. 記憶は時間の経過とともに薄れてしまいますし、時間が経過すると報告をすること自体が面倒に思えてきます。報告はその日のうちにしてもらいましょう。

  7. 報告は書面を使いましょう
  8. 書面を使う主なメリットとして以下の様なものが挙げられます。

    ●記録として保存できます
    ●情報の共有がしやすくなります
    ●報告に慣れていない場合でも、必要な事項を記入していけば報告が出来ます

    次のリンクをクリックすると報告書のサンプルが開きますので、自社の参考にして下さい。
    (例)ヒヤリ・ハット報告書
    (サンプルには図を書く欄がありませんが、図を書く欄を設けてもよいでしょう。)

    引用:http://niigata-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/library/niigata-roudoukyoku/roudoukyokunituite/kantokusyo_oshirase/04/260711_04hiyarihatto_houkokuseido.pdf

  9. 報告は全員で共有しましょう
  10. ヒヤリ・ハットは誰でも経験する可能性があるものですし、別の場所でも同じように起こることが多いものです。部署内だけや事業場内だけでなく、全員で共有することでより一層の効果が期待できます。

  11. 報告を今後の改善に活かしましょう
  12. ヒヤリ・ハットは、「気を付ける」という個人の意識に頼るだけでなく、作業方法や作業環境に具体的な改善を施すことで解決できるものも多いです。注意喚起を行うだけでなく、具体的な改善に繋げていきましょう。

ヒヤリ・ハット活動からの発展

ヒヤリ・ハット活動は安全衛生活動の入口にあたる活動です。ヒヤリ・ハット活動に慣れてきたら、KY活動やリスクアセスメントへステップアップすることで、より効果的な対策になることでしょう。これらの活動については、次回以降に改めてご説明していきます。

参考資料
製造業向け 未熟練労働者に対する安全衛生教育マニュアル(厚生労働省 都道府県労働局 労働基準監督署・(一社)日本労働安全衛生コンサルタント会)
以下リンク先からダウンロード出来ます。
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000118557.html